個人再生委員と管財人の違い
個人再生を行うと、申立後に「個人再生委員」という人を裁判所が選任することがあります。破産の管財人とイメージは似ていますが、同じような面と、違う面があります。
管財人と同じなのは、申し立てた人にも債権者の方にも片寄らず、客観的、中立的な第三者的立場である点です。どちらか一方に有利なことをするとその中立性は失われ、管財人、個人再生委員に対する信頼は失われるので、この点は非常に重要な観点です。
個人再生委員と管財人の違いとして大きなことは、いくつかあります。
財産の管理権があるかないか
一つは、財産の管理権があるかないかです。
破産というのは、清算手続きで、申し立てた人に財産があれば、その管理権は管財人に移り、管財人が財産をお金に変えて、税金や社会保険料など(財団債権)を払ったり、債権者に配当を行ったりします(金額が低ければ、配当をせず、管財人の報酬になることもあります)。
一方、個人再生は、清算手続きではありません。申し立てた方は、どんなに高価なものを持っていたとしても、それらを売らないといけなかったり、売ったお金を債権者に配当しないといけなかったりといったことはありません。財産の管理権は、申し立てた人にとどまったままです(こういった手続きをDIPといったりします)。ただ、個人再生には、持っている資産の金額以上を払うというルール(清算価値保証原則)があるので、財産が多い方は支払う額が増える恐れがあります。
財産の管理権があるかないか
管財人は、財産を管理し、お金に変えることのほか、債権者に配当するという重要な役割があります。ここで、債権者でもない人に配当したり、各債権者の債権の金額を間違ったりすると、他の債権者の配当が減ったりと本来あるべき配当ができないので大変なことになります。そこで、管財人は、債権者が届け出た債権が正当なものかどうか、金額は正しいか等を判断して、その債権者に配当をするかどうか、配当するとしてその基礎となる債権の金額はいくらか、を決めるという権限を持っています。
一方、個人再生委員は、債権者が届け出た債権が正当なものかどうか判断する権限は持っていません。債権者が届け出た債権に対して、異議を言えるのは、同じ立場の債権者または申し立てた人だけです(民事再生法226条)。これらの人が特に異議を言わなければ、個人再生委員は、債権者が届けてきた債権が正当なものかどうか、判断する権限は持っていません。債権者からも、申し立てた人からも異議が出なれば、正当な債権として認められるということになります。ただし、異議が出た場合、異議を出された債権者は、放っておくと自分の債権を認めてもらえず、再生の支払いをしてもらえないので「査定」という申立てをします。この査定の申立がされた場合に限っては、個人再生委員は、裁判官を補助するかたちで「その債権が正当なものか」「金額はいくらが正当なのか」について、意見を言う(勧告をする)権限があります(民事再生法223条2項2号)。