業再生の手続きいろいろ(2014年VOL.2)
会社が経営不振になった時に取ることのできる法的手続きに関しては、大きく分けて、会社の事業を終了して清算に至る手続きと、債務の圧縮などを通して企業活動を継続していく方法とに分かれます。今回はその後者の事業継続を前提とした手続きについて説明します。
事業再生を前提とした手続きにも、裁判所を通して行う強制的な公的手続と、第三者機関などを通した任意の手続きである私的整理があります。
1.手続きの種類
公的な手続きとして
・ 会社更生
・ 民事再生
があります。
任意の手続きとして
・ 金融機関と個別に任意の協議(利息の軽減、元金据え置き)
・ 中小企業再生支援協議会の再生支援制度
・ 特定調停
・ 認定支援機関
・ 事業再生ADR
・ 地域活性化支援機構(REVIC)
などがあります。
2.公的手続と任意の手続きの違い
会社更生、民事再生の公的手続の強みは、手続きに強制力があること、大幅な債務カットが可能である点です。会社が現在破産したと仮定した場合の配当率(清算配当率)を上回る配当をしないといけないというルールがありますが、それをクリアし、かつ、一定割合の債権者の賛成があれば、裁判所が認可決定を行いますので、全債務について等しい割合で債務カットされます(抵当権を有する債権者、リース債権者、税金など一定の例外はあります。)。更生計画案、再生計画案に反対の債権者も、これに従わないといけません。多数決のルールで、強制的な債務カットができる制度です。
逆に使いづらい点は、債権者全員を相手にしないといけないので、取引先に対する債務もカットの対象となってしまう点です。手続きをとったことが周りに明らかになるので、社会的な信用も落ちます。よって、本業の経営に影響が出る恐れがあります。また、申立代理人の費用や多額の予納金がかかります。
債務カットの金額が大きいので、効果は抜群ですが、デメリットも多いので、言ってみれば効き目が強いが副作用も大きい「劇薬」のような手法です。
任意の私的整理の強みは、金融機関のみ相手にすること、手続きは公開されず秘密裏に進むので、取引先の債務カットをせず、取引先、その他周りに手続きをとっていることを知られないまま進めることができる点です。周りに知られないので、社会的信用が落ちる心配は、公的手続に比べかなり低いです。
弱みは、基本的に手続に参加する金融機関全員の了解がいる点です。また、公的手続ほど大きな債務カットが期待できません。ほとんどの金融機関が同意しても、一部の金融機関の同意が得られない場合は手続が進められません。実際にも一部の金融機関の了解を得られずに法的手続きに進まざるを得なくなった例があります。
手続きにかかる費用は、私的整理の中のどれを使うかにより様々です。