バイナリーオプション等の投資失敗による破産

バイナリーオプションとは、通貨ペアの為替レートが一定時間後に指定したレートを上回るか下回るかを予測する取引のことです。

バイナリーオプションをして借金ができた場合、免責不許可事由(借金の免除を許可できないことがら)に当たります。具体的にいうと、「浪費、賭博その他の射幸(しゃこう)行為をしたことによって、著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」という免責不許可事由(破産法251条1項4号)に当たります。射幸行為というのは、偶然に頼って利益を得ようとする行為です。

つまり、パチンコや競馬、競輪等のかけ事は「賭博」にあたるので、上記の法律に明記されていることになり、免責不許可事由に当たるのは明らかです。しかし、賭博でなくても、偶然に頼って、利益を得ようとする行為は、すべて「射幸行為」として免責不許可事由に当たります。

バイナリーオプションは、投資の一種だと思われます。投資については、上記の法律に、「投資」とは書いていないので、免責不許可事由に当たるかどうか解釈の余地はありますが、一般的には確実に利益を得られるわけではないので、射幸行為とみなされ、免責不許可事由に当たると考えられています。

福岡地方裁判所が使用している定型の破産の申し立て書式がありますが、その申立ての書式にも、「浪費、賭博その他の射幸(しゃこう)行為」の例として、株式等の投資も書かれています。つまり、福岡地方裁判所が投資行為を射幸行為の一種で、免責不許可事由にあたると考えているのは明らかです。

したがって、バイナリーオプションに限らず、FX、暗号通貨、株式等の金融資産に投資して損失をこうむり、財産を減らしたり借金を負ったりして破産に至った場合は免責不許可事由になります。

しかし、バイナリーオプション等の投資をして破産に至った場合、絶対免責が下りないかというと、そうではありません。破産手続きには「裁量免責」という概念があり、免責不許可事由がある方でも、裁判所の裁量で免責になる可能性は十分にあります。免責が下りないものと決めつける必要はありません。

免責にならないことを恐れて、バイナリーオプション等の投資をしていたことを隠して破産の申し立てをするのは、まったく得策ではありません。破産法には「虚偽の説明をしたこと」が免責不許可事由に当たるという決まりもあり(破産法252条1項8号)バイナリーオプションをしたのに、それを隠して申立をすると、この「虚偽の説明」をしたことになり、新たに免責不許可事由を作り上げてしまうことになります。

過去は変えることができませんので、正直にバイナリーオプション等の投資をしたことは裁判所に報告して、そのうえで、しっかりと反省をして、そのことを裁判所にわかってもらうことが、免責を得るうえで一番重要です。

また、バイナリーオプション等の投資により、いくら損をしたかも報告をする必要があります。バイナリーオプションは短時間で決済を繰り返す取引のため、1日に何回も取引があり、取引明細が膨大なることが多いです。膨大な取引資料をすべて出す必要まではないと思いますが、いくら損したかのトータルが載ったページ程度は裁判所に提出した方がいいでしょう。

また、個人再生であれば、免責不許可事由があっても手続への影響はあまりありませんので、ある程度支払いっていける余裕のある方は、個人再生をするという方法もあります。