任意整理
任意整理について
「保証人がついているので、破産や個人再生をすると、保証人が払わなければいけなくなり、迷惑をかけてしまう。」
「自己破産や個人再生は、印象がよくないので避けたい。」
「自分で借りたものだから、基本的には返したいが、今のままだと返せない。」
「車のローンが残っているが、車は維持したい。」
「破産をしたことがあるので、2度目が認められるか心配。」
借金のご相談を受けていると、そのようなお声をよくお聞きします。
確かに、自己破産、個人再生をして、債務を免除してもらったり、減らしてもらったりすれば、生活はかなり楽になりますが、一方で、デメリットもあるので、上記のようなお声にこたえられない場合があります。
そんな場合、自己破産、個人再生をせずに債務を整理する方法があります。任意整理という方法です。
任意整理とは
任意整理とは、裁判所を通さずに、債務の整理をする方法です。
自己破産、個人再生は、それぞれ、破産法、民事再生法という法律にのっとった公的な手続きで、必ず裁判所を通して行います。
これに対し、任意整理は、裁判所などの公的機関を使わない借金の整理の手続きで、破産や個人再生などの公的整理に対して、私的整理と呼ばれます。
個人破産や個人再生は、法律に基づく借金の整理の手段なので、
「どのような場合に申し立てが可能なのか。」
「手続きをするのにどのような書類が必要か。」
「どのような手順で進んでいくか。」
「どのような場合に、借金の免除(破産)や一部免除(個人再生)が認められる(または認められない)か。」
「(個人再生の場合)どの程度の債務が免除になるか。」
など制度の大枠は、法律で決まっています。
これに対し、任意整理は、法律にのっとって行うものではないので、手続きの内容が法律で決まっているわけではありません。
なので、どのような内容になるかは、全て債権者との交渉により決まります。
また、個人破産は、債務の全額を免除してもらう制度ですし、個人再生は債務の多くの部分を免除してもらいます。しかし、任意整理は、基本的には、今残っている債務の金額(元本の金額)はすべて支払わないといけません。
では、どのようにして借金の支払いを楽にしてもらえるのか。
以下で説明します。
任意整理とは、弁護士が依頼者様の代理人として債権者と個別に交渉し、今後の借金の支払方法を変えてもらうものです。
支払方法を変えるというのは、大きく言うと以下の2点についてです
1 完済までの支払期間を延ばして、ひと月あたりの支払額を減らしてもらう。
2 契約で決められた利息を、今後は支払わなくていいようにしてもらう。または、利息の利率を減らしてもらう。
具体的に例を挙げて説明いたします。
例えば、Aという信販会社から、利息15%で100万円を借りていたとします。契約で決まっている支払の月額が3万5000円だったとします。
今後、A社から、一切借入をせずに、ひたすら返していったとすると、いつ全ての金額を返し終わるでしょうか?また、利息はいくら払わなければいけないでしょうか?
1ヶ月3万5000円ずつ払うと、約3年で完済となります。
この場合、支払総額は124万円程度となり、うち元金が100万、利息を24万円程度払ったことになります。
これを仮に弁護士が介入して、任意整理したとします。
例えば、4月1日に弁護士に依頼をし、債権者との交渉がうまく行き、5月1日に、以下の内容の和解が成立したとします。
弁護士に委任した4月1日から、和解日前日の4月30日までの利息は払わなければいけない。
・5月1日以降の利息(「将来利息」といいます。)は一切請求されない(利息をゼロにしてもらう。)
・支払期間を5年
とすると、
・支払総額は、101万2500円(元金の100万円+4月1日~4月30日までの年15%の利息1万2500円の合計)
・支払額は、月額1万7000円(最終回は、端数調整により9500円)
となります。
ひと月あたりの支払額は3万5000円から1万7000円へと約半分に減り、毎月の家計がかなり楽になります。
また、全部で支払う総額も124万円ほどから101万2500円ほどになり、約23万円も減ります。
支払総額 | 支払月額 | 支払期間 | |
---|---|---|---|
任意整理前 | 124万円 | 3万5000円 | 3年 |
任意整理後 | 101万2500円 | 1万7000円 | 5年 |
結果 | 約23万円 down | 約50% down | 2年延長 |
このように、破産で債務全額免除や、個人再生で債務の大幅なカットというほど劇的な効果はないものの、借金の元金は全額払いながら、毎月の支払と全部の支払合計額をかなり減らせるので、大きな効果があります。
任意整理は、相手の債権者との任意の交渉になり、相手には、絶対に応じないといけないほどの義務はないものの、上記の
・支払期間3~5年(長くて7年程度)以内
・和解日以降の利息は一切取らない
という内容であれば、かなり多くのケースで応じてもらえます。